2020年10月5日月曜日

Valsa - Estela[Leandro Braga] 製作記

  2020年5月上旬、ちょうど地球の真裏にあるブラジルのリオから一通の手紙と言うか、連絡が入る。正確には、うちのカミさんの師匠の旦那さん(ピアニストであり作曲家でもある)レアンドロ・ブラガ氏よりメールが届き、

「俺の曲、弾いてみるか?」


との話が降って沸いた。

コロナ家中、世界中が右往左往もままならない最中、なかなかにないチャンスが舞い込んだ、そんな感覚の中で即答したカミさん。そして追加で


「せっかくだから、何か画を入れられない?」


と。

まあ、滅多にない機会だし、音だけ返すのも味気ないし、前々から気になっていた実験機材も揃いつつあったしで、安請け合いをしたのが始まりだった気がする。

正確にはよく覚えていないが正しい(笑。

 曲を聴きつつイメージを固める。大まかな流れが決まればいいが、何せ身動きが難しい時期、協力をお願いするにしてもなかなか勇気がいる時期でもあったため、極力無茶な動きを避けて、出来るだけ簡素に・・・といった流れでコンテを切り始める。同時に、未使用の実験機材各種のテストも開始。特に新型のジンバルは予想以上に微妙な調整で、正直これに長時間ズームレンズなんか乗っけて動き回れる代物ではなかった。否、海外の動画では可能になっていたが、そもそもの若さが違うために、自覚するまでに結構な時間を要した。もちろん、筋肉痛だけなら・・・だが、腰もおかしくなりかけるで、なかなかの駄々っ子ちゃんだった。否、自分が虚弱だったのだ。

 結局、28mmが全編通して安定したサイズになったので、単玉をメインに使用、サブとして必要ではない限り、ズームの使用は避けた。色々な面で都合がヨロシクないのである、スチール用ズームレンズとは(詳細は割愛)。

 そして撮影開始。
まずはロケ先の下見兼テストで、発色その他の確認など。

大概の店舗は今やLED仕様で、以前のような切れのある発色も少なく、主張が乏しい分、安価で優しい色合いになる。設定としては問題ないにしろ、映像としては少々物足りない。が、照明を組む時間も予算もあるわけがなく、そこは編集で、と。

図1:防音室内

撮影時刻は昼。真夏ではないので直射までは無いが、そこそこ陽が回ったりして厄介ではあった。幸い、この日は終始曇り気味。室内の蛍光灯の発色のみを修正してそのままトーンダウン。オレンジを主張したバランスで最終調整にて無事終了!

と、思いきや、後日これにとんでもない事が重なるとは夢にも思っていなかったんです、まだこの時はですね。


後日、最終確認のためブラジルとのやり取り最中にカミさんが驚く!
「え?え~!!!そんな???」
ってな感じで再撮影に。詳細は明かせませんが、まあ最初の確認の甘さが原因という事にして、良い経験となりましたわ♪


そんなわけで、画も音も再録。時間的な余裕がありませんでしたので上記のシステムを並走させて半ば強引に処理!本編中に出てくる画にはマイク映ってませんが、実際はこんな感じでした。最新の合成システムの簡素化、そして制度の高さには本当に脱帽ですわ。感謝ですよ、アドビ様♪


図2:バスキング・コーヒー店内

当家1階の、何なら我が家の離れ的存在(日々お世話になってます!)
当マンションのコンセプトカラーは【ブルー】。1階店舗の大きな窓には1年中青空を堪能できる!感満載の青の主調が売りでもあり、目印でもある。そしてこのブルーのシールドが発色調整の天敵!ちなみに店内での商品パッケージのホワイトバランスは5500kで適正が出てますので、ケルビン的なものは(慣れた方は)この辺の数字を参考にしてください。


ホワイト基調でバランスはやや暗めに抑えた設定で撮影。
色調的には印象が薄くなるので、本編ではあえて薄くブルーを足して疑似的な店内の空気を醸し出しております。ホワイト適正でも良かったのですが、とりわけ正面のプレート群の反射感が好みだったので、あえて補完しております。
そしてもう一つ、5DMark-iii(Fer.1.1.3)での撮影では、30fpsの場合1920x1080とはならず、1920x700弱の数値で処理されてしまいます。これは画像処理の関係で設定値1枚あたりの限界値を超えると、画のサイズを勝手にアナモティックに修正してくれるようでして・・・(図上参照)。


もちろん、現像時に正規の値に修正して再出力します(図上)。
まあ、コマ落ちなどなく正確に撮影してくれるので、この辺は我慢できますが、よそ様の経験談ではカメラごと停止&クラッシュなんて話もあったようでして、それを考えると怖くて仕事では使えません、正直なところ。


図3:中洲~バー・ラパン店内

 博多と言えば山笠。ご存知の通り、今年は全てのイベントが延期、中止に。そしてここ櫛田神社もまた例外無く、静かな夏を終えようとしておりました。梅雨入り前から賑やかな山準備に始まり、当日までの2週間ちょっと。この期間の博多のざわめきはある種独特です。が、今年はそれもお預け。名残惜しむようであれですが、そんな事も含めてこのカットは入れております。が、肝心な時間帯と言いますか、曇り空だったせいで当然夕焼けもあてに出来ず。辛うじてこの程度の発色にて無難な画を獲得しましたので、DNG処理の過程で今回は色を足しました。本編ではかなり主張が強くなっているかと思います。


時間的には頑張ってまずまず・・・程度の色だったのですが、ここまでで終了。
止む無く上記と同じく、色は追加しております。若干コントラストは強めにしましたが、本来の中洲の活気ある空気感には遠い、比較的おとなしい夕方でしたのでこんな感じで処理を施した次第です。



そして店内へ。
無理を言って開店前の時間帯、しかもコロナ対策前の空気で撮影となりました。
この店舗ですが、上野マスターが店を始める前もバーで、歴代バーテンダーしか入居していない場所らしいです。古風という言い方もあれですが、船旅をイメージ出来る店内の照明など、ちょっとした点で今ではなかなかお目にかかれない装飾の細かさが伺える造りになってます。興味がある方はぜひ♪
もちろん、カクテル等もお薦めです。現在、コロナ事情により上野マスターがNBA福岡ブロックの責任者を兼任されてらっしゃいます。昨年までは県代表で全国大会などに出場されていた、バーテンダーとしての実力も全国レベルの選手なんですよ。オリジナルカクテルなど、幅広く品ぞろえがありますし、彼はテキーラマイスター等の資格保持者でもあるので、その辺でも存分にお楽しみいただけます。



現在の営業時はマスクはもちろん、その他のおびただしい対策は完璧にこなされてますが、本来の店の雰囲気はこんな感じなんです。木を基調にしてますので、当然アンバー主体の黄色系に転びがちな造りです。そこは逆らわずにそのまま利用して、フェイスバランス(顔色)のみ微修正?全体のトーンを微妙に下げて処理しました。機会があればカウンター内に照明をと思いましたが、これはまた次回以降のお願いという事で(よろしくお願いします!!!)。
ジンバルが思いの他スムーズに稼働し、その他の簡易ドーリーも問題なく作動。時間を考えて保険でサブ機を投入。


このカットのみ、7DでMagic Lanterを稼働させて撮影してます。
30fpsですが、如何せん画角は1700ちょっとしか稼げず、増加して編集に使用してます。パッと見ではわかりませんが、それほどこのシステムの発色が素晴らしい事だとご理解いただければ幸いです。
もちろん、メーカー様非公認ですけどね♪

全体を通して、ともかくスチールカメラ本来の発色性能を活かせるシステム、そしてコマ単位での色調補正が可能!この強みは現行の業務機を除けば値段的にはダントツに安い!・・・んですけど、システムの拡張性と補佐、何よりも現像に対応するための莫大なストレージが必要である点、そしてその作業時間の長さ、ここがプロユースでは全くナンセンスな点なんです。少なくとも、変換時間を短縮出来るのであれば、もう少し可能性もありますが、そもそも解像度の限度が狭いため、将来性という点では厳しいのかな?と。ちなみに今回の撮影で全データ、原版、現像DNG、編集用PSD計3種を基本に、音声、その他を含めた合計容量ですが、外付けHDで既に10TBを超えております。

要するに、必要なカットだけ!残せば問題も減りますが、流石に未編集素材の断捨離は無理がありますので、この辺に理解がある方のみにお薦め出来るシステムかな?と思ってます。

次回作は未定ですが、ぼちぼち実験を重ねながら進めたいと思ってますので、お時間がある方は次回もお付き合いくださいませ。






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